創作意欲はあるのに、何を描けばいいか分からなくて困ったことはありませんか?
絵のネタやテーマに困ったとき役に立つかもしれないアイデアをなるべく多く掲載します。
今回は「人物画のコンセプト」についてまずは列挙して、その後で考察してみましょう。
とりあえずザーーッと並べてみます。
詳しく知りたい方は下部の解説、考察も読んでみてください。
1.コンセプト一覧
1 人物の内面表現:
2 人物の物語:
3 ジェンダーや性別の表現:
4 障害や病気の表現:
5 人種や民族の表現:
6 仕事や職業の表現:
7 人物の関係性:
8 人物の美しさ:
9 人物の動きや動作:
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2.解説、考察
それでは1つずつ解説、考察してみましょう。
1 人物の内面表現:
人物の表情やポーズ、衣装や背景などを通じて、人物の内面を表現する作品です。
例えば、悲しみや喜び、孤独や希望などの感情を描くことができます。
小説は筋書きやストーリーより心理描写のほうが大切と言われます。
漫画はストーリーではなく、キャラクター設計や感情描写のほうが大事と言われます。
人物画はモデルさんの美しさを表現できれば、それも美点になりますが、
物憂げな表情や、言葉にできない感情を表せると絵にグッと深みが出ます。
2 人物の物語:
ポール・ドラローシュ『アルプスを越えるボナパルト』
人物の生き様や物語を描く作品です。
例えば、歴史上の人物や、フィクションのキャラクターを描くことができます。
また、自分自身や身近な人物の物語を描くこともできます。
生き様や人生を一枚の絵に表すのは難しいものですが、困難に直面しているときに挫けていない表情や一心不乱に職務に集中している表情を描くことで人生の一面を切り取ることはできそうです。
3 ジェンダーや性別の表現:
男女やLGBTQなど、人物の性別や性的指向にフォーカスした作品です。
例えば、男性らしさや女性らしさ、ジェンダーの多様性を表現することができます。
十分な理解と配慮が必要なテーマですが、時代に求められているものでもあります。
決して好奇心や奇抜さを求めるために描いてはいけないテーマです。
それでも描かずにいられない内なるエネルギーがあるのであれば、今こそ描くタイミングかもしれません。
オーストラリアでは毎年2~3月にかけてマルディグラというLGBTQの祭典があります。
日本では考えられないような派手さとオープンさです。
固い頭をハンマーで殴る、もしくは目からウロコを落とすのがアートの役割とすれば、チャレンジしがいのあるテーマです。
4 障害や病気の表現:
身体的、精神的な障害や病気を抱える人物を描く作品です。
例えば、身体障害者や自閉症スペクトラム、うつ病など、多様な状況を描くことができます。
こちらも十分な配慮が必要なコンセプトですが、同じ悩みを抱える人の励みや救いになるかもしれません。
すぐに治る見込みのない障害や病気をテーマに絵を描くのは勇気がいります。
それでも寄り添う、もしくは健常者の理解を促進するという目的があれば、共感を得られる可能性があります。
健常者の理解促進というコンセプトでは啓発ポスターみたいになってしまうリスクはありますが、何もしないよりよっぽどいいでしょう。
パラリンピックの例をとるまでもなく、生き生きと活躍されている身体障碍者の方はたくさんいます。
逆に健常者のほうが勇気やエネルギーをもらったりするくらいです。
5 人種や民族の表現:
人物の肌の色や文化的背景にフォーカスした作品です。
例えば、黒人やアジア人、ネイティブアメリカン、ユダヤ人など、様々な人種や民族を表現することができます。
日本人は苦手とする人が多いかもしれません。だからこそチャレンジしがいがあります。
多様性に関してもダイバーシティという単語は一般化しましたが、受け入れるとか許容するとか、本当の意味で浸透しているかというと怪しい部分があります。
その一方で好きな民族や文化へのリスペクトを表すという方法もあります。
これなら分かりやすいですよね。
音楽ならジャズやヒップホップ、レゲエ、ボサノバ、サルサとキリがないくらいあります。
音楽など形のないものを絵にするのは難しいですが、楽しそうに演奏したり、歌ったり、踊ったりしている姿は十分に絵になります。
6 仕事や職業の表現:
ゴッホ「種をまく人」
人物の仕事や職業を描く作品です。
例えば、医者や看護師、芸術家や作家、農夫や漁師など、様々な職業や仕事を描くことができます。
ミレーの『晩鐘』(ばんしょう)、ゴッホの『 種をまく人』『ジャガイモを食べる人々』など名作がたくさんあるテーマです。
仕事に打ち込む姿は力強いですし、生き様や人生も垣間見えます。
自分の就いている仕事を絵にするのはいかがでしょうか。
デスクワークの人はこれでは絵にはならないと決めつけずに、まずは構想を考えてみてはいかがでしょうか。
100年後にオフィスワークという仕事の仕方、形態がAI(人工知能)の発達で無くなっている場合だってありますから、当時の風俗、風習を表す貴重な資料になる可能性だってあります。
7 人物の関係性:
人物同士の関係性を描く作品です。
例えば、夫婦や恋人、親子や友人など、人物同士のつながりを表現することができます。
一緒にいて笑っている、にこやかにしているという姿は見ているほうもハッピーになれるかもしれません。
乳児と母親は世界共通の幸せな光景ですし、分かりやすいものです。
その一方、年老いた母親を介助している初老の息子の姿は見る人に複雑な感情を呼び起こします。親孝行の美しさだけでなく、老老介護という現実も突き付けます。
人間関係はキレイごとだけでは済まないだけに、いい面も悪い面も描ければ一種のドラマのような感慨を鑑賞者に感じさせるでしょう。
8 人物の美しさ:
美しさを追求した作品です。例えば、人物の美しい容貌やファッション、美しい風景や景色を描くことができます。
欧米人の金髪の女性は分かりやすい美しさかもしれませんが、人間の美しさは外見や容姿だけではありません。
努力する姿、頑張る姿、どん底から奮起する姿、くじけない姿、涙をこらえる表情などいくらでもあります。
また年老いた老婆が何かの作業に打ち込む姿、苦労の後が垣間見えるしわくちゃの顔や手も美しいものです。
誰も気づいていない美しさを発見したら、絵は成功したも同然かもしれません。
9 人物の動きや動作:
人物の動きや動作を描く作品です。例えば、ダンスやスポーツ、日常の動作など、人物の動きを表現すること。
分かりやすい動きでいえば、踊る姿、疾走する姿、跳躍する姿、汗が光る姿などがあります。
日常のなにげない動作は家事をしているものだったり、母親が幼児を支える動作だったりいろいろあります。
いずれも一瞬を切り取るポーズが絵に動きとエネルギーを与えてくれます。
補足
絵のテーマ探しは自分探しと似ています。
探そうと思えば延々と永久に続けることができます。
今回、挙げた項目を100個に増やしても描かない人は描きません。
描く人はさっさと描き始めます。
壮大な構想の素晴らしい絵なんて夢を見ないで、手近なテーマでまずは「落書き」から始めてみましょう。
百均のメモ帳にボールペンで落書きしてみましょう。
鉛筆だと消したりして上手に描こうとしてしまうので、ボールペンでガンガン描いてガンガン失敗してください。
完璧なコンセプトやテーマが決まってから描き始めるのでは、いつまでたっても描けません。
コツは「走りながら考える」「描きながらドンドン修正していく」です。
絵を描くテーマやアイデア探しの一助になれば幸いです。
今回は以上です。