フェルメール「牛乳を注ぐ女」
人物画を描くとき、ポーズがマンネリになって困ったことはありませんか?
絵のネタやテーマに困ったとき役に立つかもしれないアイデアをなるべく多く掲載します。
今回は「人物画のポーズ」についてまずは列挙して、その後で考察してみましょう。
とりあえずザーーッと並べてみます。
詳しく知りたい方は後半の解説、考察も読んでみてください。
1.人物画のポーズのアイデア一覧
1 立ち上がるポーズ(立つ途中、または立った直後)
2 座るポーズ 3 倒れるポーズ 4 手を組むポーズ 5 横たわるポーズ 6 手を広げるポーズ 7 足を組むポーズ 8 壁にもたれるポーズ 9 足を前に出すポーズ 10 背中を丸めるポーズ 11 遠くを見るポーズ 12 膝を抱えるポーズ 13 手を伸ばすポーズ 14 肩を落とすポーズ 15 踊るポーズ
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2.解説、考察
それでは1つずつ解説、考察してみましょう。
1 立ち上がるポーズ(立つ途中、または立った直後)
- 肩を開き、上半身を引き上げるポーズ。力強く、自信に満ちた印象を与えます。
立った直後の胸を張ったポーズは自信に満ちていたり、強い意志を感じさせます。
実際にモデルさんに立つ途中のポーズをしてもらうのは過酷かもしれません。
そのため、手早くクロッキーなどで速写するか、写真を撮って、あとでゆっくり描くか工夫が必要です。
なぜわざわざ立つ途中のポーズをしてもらうかというと動きが出て、絵に勢いやエネルギーを感じてもらえるからです。
2 座るポーズ
- ゆったりとした姿勢で座るポーズ。リラックスした印象を与え、親密な雰囲気を演出できます。
定番のポーズですね。
座るイスはソファーの他、木製の椅子、背もたれのない丸椅子などがあります。
また椅子を使わず、床に座ったポーズもいろいろあります。
床に座るポーズは体育座り、正座、アグラもあれば、片膝を立てた座り方もあります。
アムステルダムの人魚姫の像のような座り方は女性らしい柔らかな雰囲気になります。
3 倒れるポーズ
- ソファーやベッドなどに倒れているポーズ。無防備な姿勢で、疲れた印象を与えます。
人物画は顔を描くものと思い込んでいませんか?
うつ伏せで顔が見えないのもアリですよ。
OLらしき働く女性が洋服を着たまま、バッグを足元に投げ出すように置いたまま、ベッドにうつ伏せになっている様子を描けば、そうとう疲れているんだなと推測できます。
若い女性が失恋して悲しみで突っ伏している様子を描くのも珍しいので興味を引くかもしれません。
4 手を組むポーズ
- 手を組んで胸元に置くポーズ。真剣な表情と組み合わせると、決意や覚悟を感じさせます。
他に考えられる感情としては、怒っている、ムッとしている、拒絶、受け入れていない、困っている、悩んでいる……などが考えられます。
手を組むポーズと表情を組み合わせるのが大事になります。
首をかしげていれば悩んでいたり、困っている感じ、さらに眉間にシワを寄せていれば深く考えている様子が描けます。
人物画は美人やかわいい人だけがモデルではありません。
中年以降の男性にこのポーズをさせると、うまくすれば哲学者が沈思黙考しているようなイメージに近づくかもしれません。
5 横たわるポーズ
- 体を横たえて寝そべるポーズ。リラックスした印象を与える一方で、少しセクシーな印象も演出できます。
完全にあおむけになるのではなく、上半身を少し起こしたようにすると描きやすくなります。
裸婦画でもよく見られるポーズです。
6 手を広げるポーズ
- 腕を広げて立つポーズ。自由自在に空間を支配するような印象を与え、強さや自信を表現できます。
鳥や飛行機のように手を広げるのもあれば、手のひらを前に向けて抱きしめる直前みたいな手の広げ方もあります。
7 足を組むポーズ
- 足を組んで座るポーズ。優雅さや上品さを演出できます。
他には偉そう、不遜、傲慢というイメージにも使えます。
カフェなどのテーブルの下で足を組んでいる場合は、リラックスしている、集中しているというイメージもあります。
8 壁にもたれるポーズ
- 壁にもたれかかって立つポーズ。ほのかな不安や緊張感を表現できます。
他には疲れている、愕然としている、茫然としている、単純に暇である、何かを待っている……といった雰囲気を出せます。
9 足を前に出すポーズ
- 一歩前に出した足で立つポーズ。前向きで勇敢な印象を与えます。
これからスタートというイメージもあれば、闘志や戦闘態勢を感じさせることもあります。
10 背中を丸めるポーズ
- 背中を丸めてうつむいているポーズ。悲しみや落ち込んだ印象を与える一方で、優しさや謙虚さを表現できます。
地面に座ったり、椅子の背もたれに体を預けて、背中を丸めていたら、相当ガックリきているんだなと感じさせます。
その一方で、立ったまま背中を丸めて下を見つめていると、絵を見る人は自然と視線誘導されます。
見つめている先に小さな花があったり、何かホッコリするものがあると、主人公の優しさを表現できます。
11 遠くを見るポーズ
- 遠くを見つめるように見上げたポーズ。達観した印象を与え、深い思索や哲学的なテーマを表現できます。
背景の空でもイメージを強化、サポートできます。
暗雲たちこめるような雲だと困難に立ち向かう意思を感じさせます。
夕焼けであれば、物思いに沈んでいたり、深く考え事をしているように表現できます。
暗い背景で見上げるポーズは、困難の中でも諦めていないものか、進退窮まって絶望の中で天を仰いでいるものかなどのイメージが考えられます。
12 膝を抱えるポーズ
- 膝を抱えてうずくまるポーズ。孤独や哀しみを表現できます。
いわゆる体育座りで俯いていれば定番ですね。
片膝だけを立てる座り方で、片方の手が後頭部にあれば、かなり困っているんだなと感じさせます。
13 手を伸ばすポーズ
- 手を伸ばして何かを掴むようなポーズ。未来への希望や野心、挑戦を表現できます。
前に伸ばすのであれば、逃げるものを掴もうとしているのかもしれません。
上に伸ばすのであれば、夢や希望を掴もうとしているのかもしれません。
困難に負けず努力を続け、希望を持ち続ける姿は見る人にも希望を与えます。
14 肩を落とすポーズ
- 肩を落としてうつむくポーズ。挫折や失敗を表現できます。
挫折はそこで諦めてしまえば、失敗が確定します。
諦めずに別の方法を試そうと前向きに進むのであれば、上手くいかない方法が見つかっただけと考えることもできます。
100通りでも1万通りでもやって、どうやっても完全にムリと証明するまでは、成功の途中と解釈することもできます。
肩を落としている主人公の脇に希望を感じさせるモチーフを描けば「諦めないで、希望はすぐ近くにあるんだよ」というメッセージを伝えることができます。
ちなみに、希望を感じさせるモチーフは以下があります。
①. 太陽や日の出: 太陽は新たな始まりや希望の象徴とされています。日の出の美しい光景は、新たな日々や未来への期待を感じさせます。 ②. 花や新緑: ④. 羽根や翼: ⑤. 笑顔や助け合い: |
主人公は落ち込んでいるけど、すぐそばまで希望が来ているんだよというメッセージは、絵を見る人をポジティブな気持ちにさせます。
15 踊るポーズ
- 身体を揺らして踊っているポーズ。楽しさや喜び、自由な気持ちを表現できます。
踊りは人間の根源的、本能的な喜びに直結しています。
踊るのは自分でやっても、人がやっているのを見るのも楽しいものです。
バレエやジャズダンスのような踊りもあれば、盆踊りもあるし、原始的な原住民の力強い踊りもあります。
補足
人物画のポーズはその人物が持つ心情や印象を表現するための重要な要素です。
慣れないうちは写真やイメージを参考にしながら、練習してみると良いでしょう。
絵のテーマ探しは自分探しと似ています。
探そうと思えば延々と永久に続けることができます。
壮大な構想の素晴らしい絵なんて夢を見ないで、手近なテーマでまずは「落書き」から始めてみましょう。
完璧なコンセプトやテーマが決まってから描き始めるのでは、いつまでたっても描けません。
コツは「走りながら考える」「描きながらドンドン修正していく」です。
絵を描くテーマやアイデア探しの一助になれば幸いです。
今回は以上です。